中元すず香さんが好きです

この素っ頓狂な人は

柔らかくてデキるやつ

世間では「ダークサイド」と言われているソロ・プロジェクトが始まったおかげで、もしかしたらこの人はものすごく「デキるやつ」なんじゃないかと疑っていた、中元すず香の正体が露わになってきたので、私は未来に期待しています。

作り込まれた「優れた楽曲」でガチガチに守られなくても、シンプルなリフの繰り返しであっても、それでもすず香先輩はステージで栄える(映える)ことがわかったからです。けっしてコンテストで優勝するタイプではありませんが、なんかヘンな説得力で最後まで押し切ってしまえるところが、先輩のジーニアスな部分です。*1

グルーヴィーです。

いくらメタル界が "白人社会" だとしても、先祖がR&Bやロックンロールであるからには、どうしたってそこには「グルーヴ」があるわけです。黒いテイストと言ってもいいです。聴くほうだって、グルーヴを手掛かりにして、その曲にノルためのポイントを探し当てたりします。パンテラまで行かなくても、メタリカだってグルーヴィーです。でもそのグルーヴをステージの上で視覚的に明示することはしません。メタルというコンセプトの中で、グルーヴには表向きの重要性がないからです。プレイヤーは楽器をいっしょけんめい弾いてるだけだし、ボーカリストはマイクを持って体を前後に曲げるか、頭を振ったり歩きまわったりする程度の動きしかしません。

"グルーヴ" を目に見える形で表現する存在が、ステージの真ん中でクネクネ動いてるのが中元すず香のステージです。出自が「ホンモノ」のメタルじゃなくてアイドルだったおかげで、そういう柔らかいことができるようになったとも言えるでしょう。

そしてすず香さんの生育環境からはまったく想像もできないことですが、どういうわけか先輩は体でグルーヴがわかっているのです。中元すず香は、ある意味インテリの静的な音楽だったメタルが忘れていた "身体性" を正面から突きつけて、無理やり思い出させたグレートな人間であります。どうかすると歌ばかりが注目されますが、黙って動いてるだけでバカ目立ちなすず香先輩の最大の功績は、頭で作った楽曲に肉体を持たせたこと、あるいは楽曲を構築するのとは別の価値観がHR/HMの血の中にも流れているのを暴露したことにあります。

動画に映る観客は、上下に跳ねるとか、腕を上げて前後に動かすとか、目ぇつぶって頭を振るとか、ようするにいつもの挙措でしか対応できていません。グルーヴというものが何であるか、すず香先輩が身をもって示しているのですから、今後はその教えを吸収して改善してほしいものです(私は "その手には乗りません" けど)。

べつに「イレズミ」だけではありません。元々ハウスやドラムンベースなんかが混じってるので、BABYMETALにはグルーヴィーでファンクな曲も多いです。あわだまもそうですね。

なんたらが「ひとつ」とかいうコンセプトには私は一切関心がありませんが、どうせなら橋渡しじゃないけど、意地でもメタルを聴こうとしないブラックコミュニティにもアピールしないかなとか*2、メタルは聴かなくてもいいからすず香先輩には気づいてもらって、ついでに愛される存在にならないもんだろうかとか夢想します。ヒスパニックの皆さんについては、メキシコで一度証明されてるからなんとかなるべ。

 

こっちはだいぶ奇妙な曲ではあるけど、それは和メタルだからですね。祭ばやしとか盆踊りとか阿波踊りとか、純邦楽方面の節回しですから、こんな曲を作れる人は海外にはおらんでしょう。そしてそれがすんなりと受け入れられるのも、世にも美しい肉体の動きがあったればこそです*3。水野君がMissアンチテーゼで最愛さまがBABYMETALのファシリテーターであるなら、すず香先輩は断然、HR/HM界のカタリストです。 

最高のプレイヤーを集めると最低のバンドが完成する
ドリームシアターみたいに

―― ケリー・キング

BABYMETALというバンドがそうならないのは、中元すず香というダイナモが真ん中でぐるぐる回ってるからだということを、ゆめゆめ忘れてはなりません。


天才肌なのに、なぜか教師やコーチになっても優秀そうな感じがします。そんなはずはないのに、なにか富士山みたいな大きさと包容力があります。だからどうしても私は「先輩」と言ってしまいます。せんぱぁい。
そんなオトナなすず香さんですが、0:29で両手を腰に当てるとことか、最愛さまは大魔神にしか見えないけど、先輩は相変わらずゲロ可愛いです。エレガーでも、あえて最愛みたいにキレキレなステップを踏まないで、ゆっくり腰をヒネってちょろっと膝を上げてみせるとことか、とってもチャーミングです。しかし「ちょろっと膝を上げる」までの一連の動きも、簡単なようで、体のバランスと踊りのセンスとリズム感が優れてないとできないはずなので、私は決して中元すず香を侮ることはありません

 

さて盆踊りと言えば、これから日本でTattooを演るときに、観客全員が両腕を上げて、「うしろ!まえ!うしろ!まえ!」って、ぴったりとおんなじ動きで振るのではないかと私は恐れています。
まさかね。 

 

表向きの丁寧な言い方だと勘違いしてるんだかなんだか知らんが、企業のトップや文化人、その他社会の要職にあるオッサンから、そこらへんでクダ巻いてるオッサンまで、最近ではどいつもこいつも「ぼく」だし、少なくともスッとしたビジネスマンは、経験上100%「ぼく」である。「ニュースウォッチ9」ではとうとうキャスターまで「ぼく」と言い出して、心の底から気味が悪い。この有馬という男はこの前ついに日本国民を「ぼくたち」で総括しやがったが、その中におれはぜってぇ入ってねえからな。「ぼく」が許される成人男性は、「ぼく芸」の元祖である片岡義男以外この世にいないとぼくは思ってます。うゎだめだ。人はどの時点で、どのようなメンタリティーで「ぼく」という一人称を選択するのでしょう。

*1:新曲がどうとかバンドがどうとか、舞台装置がどうとかいうのはますます些末な問題になってきました。中元すず香の個人技と瞬間芸があれば、8割方うまくいく状況です。この素っ頓狂な人は、半面地道な人でもあるので口では過激なことは言いませんし、「メイト」にも配慮しますが、やることはやっぱり素っ頓狂で、すでにBABYMETALというアナクロな重荷は振り捨てて、私たちの遥か先を行っています。BABYMETALみたいな枠は、もう先輩には不要になっているのです。
誰が復帰するとかしないとかにばかり気が行ってる人たちは、中元すず香のここ一年ほどの常軌を逸したスピード感に気づいていません。

*2:ブラックミュージックを受け付けないメタラーのほうが問題かもしれんが

*3:歌のレベルがどれだけのもんなのかは不明ですが、体の動きの美しさに限っては、ポピュラーミュージックの世界では破格のナンバーワンです。サミー・デイビス・ジュニアに並ぶ歴史的な存在なので、一瞬たりとも見逃してはなりません。神バンドなんか見てる場合ではないのです。