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BABYMETALいのち

「ナカモトっていいじゃん」としか言ってないので読む必要ないです

スパイシー・ガール

 SU-METALの右肩に天使、左肩に悪魔が乗っかって耳に何事かを囁くとして、議論の余地がないのは、悪魔の役を誰に割り振るかであろう。黒い扮装で黒い尻尾を生やして甘美な悪徳の言葉を言い募るのはMOAMETALに決まっているし、白いガウンを身にまとって静かな理性で善導するのはどうしたってYUIMETALである。なぜかはわからんが。

 しかしその映像にアフレコを当てるとしたらどうか。その場合も疑問の余地はない。天使役はまっすぐに菊地最愛であり、悪魔の声を当てるのは、一も二もなく水野由結だろう。

 互いの声を取り違えて生まれてきた二卵性双生児みたいな話だが、少女の一本気な夢想から皮膚の滑らかさまでをフニャフニャと余すところなく表現できるのが菊地最愛の声であり、その皮膚にTATOOを彫り込むようなしょっぱい残酷さを持っているのが水野由結の声ということになる。

 もしBABYMETALにキレイごとだけで終わらない懐の深さがあり、物事に対する辛辣な視線、平たく言えばイジワルな感覚がいささかでもあったとしたら、その味付けをほどこしたのは人間の闇を見通す黒い最愛の視線であり、それを耳でも感知できるようにしたのが、生姜汁のようなスパイスを垂らした水野君の声である。

 BABYMETALをただの愚昧なお人好しにおとしめようとする善良な聴衆が増えていることは否めないが、いろんなことが見えちゃう度量の深さこそが人の陰影であり、魅力というものである。BABYMETALに "大人" がハマるのは、どこかの時点でそういう理性のある「黒さ」を感知したからではなかったのか。その度量こそが、出合い頭に殴りつけてくる暴走機関車を制御できるのであるし、戦いばかりの毎日に人間的な潤いをもたらすのだから、もう少し大事に育ててもいいだろう。

 水野君の声が悪魔にふさわしいのは、音声としての言葉の処理が非常に巧みで、意味がササクレ立ってくるからである。人の耳にねじ込むには最適な仕様であるが、YUIMETALはダンスがいのちとしか思われていないらしいのが残念だ。でも先生は水野君を見ているぞ。

 

 *1

BABYMETALには一人だけ水野由結というロックシンガーがいる。
おれは由結の歌い出しの箇所をワンクリックで頭出しできる状態になっている。
よく聴くと、「伝説の」をはじめとして、
細かい節回しに神経を使っていることに気づく。
「はぁかぁなぁくぅ」の処理など、相当なテクニシャンである。
そもそもしょっぱなの一節、「」ぃち「」の「」る「」の
4つの音を聴いた時点でおれの膝は崩れた。
いいアルトサックスを聴くと鼻の奥でいいニオイがするが、
水野君の音色と音圧は一瞬でそこまで行った。
そしてロックの醍醐味は、この最後の「ギャー」のような
戦慄の瞬間に立ち会うことにある。
水野由結の本性を見たり
それから言ってもいいか。可愛いぞ。
これを聴いたうえで、それでも水野君にソロをとらせないと判断した人間がいたならば、
そいつの耳は壊死をおこしていると断言していいだろう。
ついでに言えば、諸君にはぜひとも嶽本野ばらの「ミシン」を読んで、
乙女とはなにか、ロックとは何かを悟ってほしい。

 

菊地さんは人民にあまねく愛嬌を振りまく印象が強いが、歌は正反対である。非常に親密度=intimacyが高いというか、目の前にいる一人の人間だけを相手にして、その相手にしか届かないように歌う人だ。目を合わさないように細心の注意が必要であろう。*2

 

しかし最近はどうも、BABYMETALのライブは映像を見ないで音だけ聴いてるほうが面白い。つまりブルーレイ見るよりCDのほうがいいということだ。これはいいことなのか悪いことなのか。 

 

まあそれはそうなんだけど、最近は「神バンド」抜きではBABYMETALを語れないみたいな風潮になってて、いつからそんなんなっちゃったのとは思う。3+4で初めてBABYMETALっていうバンドになるとか言うし、BABYMETAL原理主義からすると納得いかないことも多い。BABYMETALはカラオケだけのときも骨バンドのときも十分によかったし、演芸としての面白さの本質はそこで出揃っていたではないか。「神バンドがいなかったら世界には出ていけなかった」から神バンドの存在を絶対視するってのは本末転倒だとは思わんか。世界に出ていこうがいくまいが、面白いものは面白いしダサいことをやればダサいってことにはならんの。

それから世の中のBABYMETALに関する言説でつまんないなと思うのは、3人それぞれの「女の魅力」について語ってるケースがほとんど見られないことである。そういう切り口をとってはいけないっていう暗黙の縛りがあるんだろうし、そもそも3人を生身の人間として押し出す売り方がされていないせいでもある。このワタクシもそういう方向でBABYMETALについて書いてはいないし、そんな能力もない。多少は努力もしたつもりだが、結果はこのありさまである。しかし女の魅力を語ることは、そのまま3人を「人格を持った」人間として認めることではないのか。そういうものも読んでみたいのだ。どこでライブをやったとか、誰とコラボしたとか、なんの賞をとったとか、そんな報告はファンじゃなくてもできる。

いきなり話を飛躍させてシカツメラシイことを言えば、「女」であり「男」であることと「人間」であることは不可分であり、男女が "共生する" 社会とは、性差をないものとする抽象的な世界ではなく、異性をただ欲求のハケグチにする暴力的な社会でもなく、異性の人格をおおらかに認め合う「潤いのある毎日」のことを指すのだと思うし、そうであってほしい。そんでもってひるがえって、BABYMETALの人間性をもっとおおらかに愛でる態度があったっていいんじゃないかと考えるわけです。

 

*1:中元先生のダンスの可愛さは異常

*2:これは男から見れば相当にヤバイ特性であり、今後菊地さんが歩いた道には勘違いした男のシカバネが累々と連なるであろうことは疑いない。本人にはまったくそんなつもりはないところがキモである。

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