人間ザトペック

 

 

 表現方法は違っても(この人はとってもロジカル)、イヤだと思ってることがおんなじなので。

 

 

 BABYMETALのファンがどういうタイプの人間で構成されてるのか、たしかなことはわからない。でもざっくりしたところでは、元々メタルが好きで入ってきた人と、BABYMETALが好きになってメタルというものに積極的にシンパシーを感じようとしてる人の2種類で、8割方を占めちゃってる印象があるんだけど違うんだろうか。残りの2割が、そもそもメタルなんかどうでもよくて、メタルに近づこうなどとはハナから考えないまっとうな人間ということになる。

 元々メタルが好きな人間(私は残念ながらこっち)は、BABYMETALに接してもやっぱりメタル好きという枠の中で聴いている(私はどうも違う。そもそもBABYMETALとメタルは画然と区別している)。
 あんまりメタルを聴いてこなかった人は、好きになったBABYMETALを通じて、メタルに好意的にアプローチしようとする。BABYMETALの3人がメタルに接近していったように、自分もメタルにシンパシーを持とうとする。

 乱暴で図式的だけど、どっちの場合も、メタルはなんだか「よさげなもの」ってことになっている*1

 私はメタルというジャンルは嫌いじゃないけど(正確に言うと "メタル" はダサいと思ってて、エクストリームメタルが好き*2)、BABYMETALがみずからメタルという音楽の価値観に学ぼう、門を叩こうみたいな姿勢を持っちゃったら、それでおしまいじゃないかと考えてます。3人はときどきメタルの伝道師みたいなセリフを言い出すことがあって、それは実感に根ざしたマジメな認識なんだろうけど、メタルに対して真面目で一途になる姿はちょっとイタい。かなりイタい。真面目に一途に扱うとかえって妙味が損なわれる文化の形ってものもあるじゃないですか*3

 おいしいところをつまみ食いしながら骨抜きにする形で対等以上の立場を保っていたBABYMETALが、やすやすとメタルの軍門に降る姿はあんまり見たくない。

 だいたいBABYMETAL自体が「真面目に一途に扱うと妙味が損なわれる」存在の筆頭だったはずなのに、中高年が歯の浮くようなことを盛んに言い出して、ファン全体の日本人的な真面目化がびゅんびゅん加速した。BABYMETALって、そんなに真っ正直に解説したり分析したり褒め称えたりしたら面白くなくない? 自虐とか諧謔とか、そういう匙加減をまったく理解しない人間が増えたね。図らずも好きになっちゃった自分の知性や感性を疑うってことをしない。何かを好きになったら一直線っていうか、好きになったから "応援" する。好きになったから世界中の人間に認めてほしい。好きになったからベビメタTを着る。好きになったから、ベビメタTを着た仲間とキツネサインで集合写真を撮ったりする好きになったから、ベビメタTを着た仲間と飲み屋に繰り出してキツネサインで集合写真を撮ったりするよかったですね。好きで。好きになったから、けなされると怒り狂う。メタルじゃないと言われれば、音楽がわからない狭量で可哀想な人間だと憐れむ。BABYMETALは未来を俯瞰した偉大なムーブメントだし、演じているのは飛び切りの人格者でしかも天才*4なわけだから、それに共感しないやつは知性と良心に欠けたひねくれ者であると判断する。
 本当は好きになったからこそ「間違って好きになったんじゃなかろうか」って疑い続けたっていいはずだし、好きだからこそ、批判のネタを自分で見つけてきてぶつけてみるっていう遊びがあったっていいんじゃない。そういうのほとんどないもんね。ベイシティローラーズに夢中になってた中高生のほうが、まだしも客観性があったんでねーの。あるいはジャニーズのファンのほうが骨がある人が多い気がする。
 あそうそう、BABYMETALのコミュニティにとっては東京ドームはビッグイベントだけど、そこにはジャニーズっていう先達がいるから、ワールドツアーとはまた違った敷居の高さがあるね。あ、ジャニーズは「アイドル」だから、そんなものと「アーチスト枠」で東京ドームに出るBABYMETALを比較しちゃいけないのか。でもショウとしては、ミュージシャン枠で出てる人たちよりもジャニーズのほうが完成度が高い。ジャニヲタじゃなきゃ楽しめないと思ったら大間違いである。ファンしか楽しめないミュージシャン枠の人たちとはかなり趣が違う。そして個人の力量としても、たとえばタッキー&翼KinKi Kidsも、基本は2人だけで東京ドームをこなしてるし、堂本剛なんかは、ただマイク持って立って歌うだけで会場全員黙らせてる。その基本があって、さらに演出が凝ってるからね。みんなおんなじ「演芸枠」なんだから、BABYMETALも今からあんまりミュージシャン然としてワビサビの世界に縮こまらないでほしい。

 真面目でもったいぶったBABYMETALがファンを増やしているというのは、BABYMETALが文化ではなくムーブメントになったことを意味する。ムーブメントに人が群がるのは、その意図・指向が "善" であると信じられて、安心できるからである*5。そういう形で人が寄ってくるのを成功と言うならたしかに成功なんだろうが、善悪と文化にはそもそもなんの関係もない。むしろ本来的に持っていた「軽さ」や「不遜な感じ」を失うことは、文化としては明らかに堕落だと言えるだろう。演者がたまたま未成年だから、ファンがそれを人間的な成長の証だと好意的に解釈しているだけである。ずいぶん扱いやすい存在になったもんだ。

 

 

 

細かく説明することは控えるが、端的に言ってSU-METALはヘンだ。そのどこかイビツな体の動きと、無理に無理を重ねて押し切っていくさまが、トライアングル全体の動きにある種の味わい(もしくは一抹の不安)を与えていて、左右2名のまっとうなダンサーだけでは表現できない独自性が図らずも生まれてしまったのである。芸能というのは、ダメな要素を表現の核に昇華させる競争だとも言える。クリーンで引っ掛かりのない素材をキレイに表現したところで、そんなものには誰も目を止めない。エンタメの世界でグローバルに成功している人物は、みんなどこか極端に醜い部分を持っているではないか。

 

だからわたしは中元すず香を「暴走機関車」「人間ブルドーザー」
あるいは「人間ザトペック」(ザトペックは人間だが)と呼ぶのである。

 

最近では「人間機関車ザトペック」と言っても話が通じないからややこしい。
しょうがないからWikipediaから引用しておく。

「ある日突然ザトペックを含めた4人の青年が工場の実業団のコーチから陸上競技の試合に出るよう言い渡された。ザトペックは自分の体格を理由にこれを断るも、メディカルチェックを受けさせられ異常無しと言い渡されて仕方なく試合に出場し、本番ではやる気が出たこともあり100m走で2位に入る」

ヘルシンキオリンピック(1952年)の5000m10000mマラソンで金メダル」

「顔をしかめ、喘ぎながら走るスタイルから『人間機関車』と称された」

 

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  「ウェンブリーなめんなよ」ってちょっとコメントで言ったけど、一方であのライブは、ものすごくハードルの高い試練を長期的な視点であえて課すのが目的だったんだと、好意的に解釈もしてます*6。その試練とは、これから初めて世界に打って出ようっていうグループに、あの会場で体ひとつでむき出しの、20年選手みたいな王道のステージングをやらせるってことです。日本でだってあんな無防備なことはやっていない。とんでもない暴挙ですね。でも最初からあれをやっちゃえば、もう怖いもんはないからな。あんな恐ろしいことは、たぶん今じゃなきゃできなかったんだろう。

 

 「なめんなよ」って思った部分については、この2人がうまく言ってくれてます。愛がありますな。言っときますけど私はBABYMETALの3人には何の不満もありません。むしろあんな過酷な状況で、ありえないくらい立派な仕事をしたじゃないですか。

 

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しりこそばゆい【尻擽い】(形) 意外なほめ方をされたり場違いの所に置かれたりして、はずかしくてじっとしていられない気持ちである。

(旺文社詳解国語辞典)

 

 ビルボードのTop 40入りの話を聞いて、人間不信で本当に具合が悪くなったんだけど、アメリカ人おまえら自分がやってることがわかってんのか。すぐに順位が落ちたとしても、いっぺん39位なんかにしちゃった事実は消えないんだからな。あとで「あれは勘違いでした」って言ったって遅いんだぜ。人の話は必ず眉に唾つけて聞くクセをつけとかんと。そんな簡単に騙されちゃだめだ。しかし4月1日に発売したのが効いたのか、Amazonの売上順位も恐ろしいことになってるな。

 んであらためてAmazon.comAmazon.co.ukのレビューを見てみると、次から次へと物わかりがよすぎる連中があらん限りのウソ臭い形容詞を並べ立てて褒めまくっとる。「ちょっと待てよ」っていうのはないのか君たち。さすがにおれもまだそこまでは全面降伏しとらんぞ。しかしあっちの一般人(特にイギリス人)は英語の使い方がうまいから、説得力がすごい。日本人は日本語が不自由な人が多いからあんまり響いてこないレビューが多いが、それとは段違いだ。たとえ勘違いから始まった現象でも、こうやって周りから「言葉で固めて」いくと、雪だるま式に話がどんどんデカくなって歯止めが利かなくなって、全地球総勘違い状態になるから、早いところBABYMETALは解散しよう。ほんとにさむけがするわ。SF的な。

 

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 驕るもなにも、自分の経験や見聞の中に比較する対象がなければ驕りようがない。逆に言えば、私たち年寄りが後生大事にしてきた価値観が、「ふーん、それってそんなにスゴイことなんだ」ってあっさり相対化されてしまったのである。人間が「謙虚」になるには、その背後に少なくとも自分がそれなりの大きなことをしたんだという自覚がなければならない。そして世の中にはもっと立派な人がいるという認識があるから謙虚になるんである。これは人のふるまいとしてかなりメンドクサイ部類のものであり、俗塵にまみれているともいえる。そんな回りくどい心理はBABYMETALにはないはずだ。もっと澄みわたった、自分がやるべきことをただやってるっていう意識だけだろう。あの3人はただまっすぐにああいう人たちなんであって、それに礼儀とか謙虚なんていう加齢臭がする言葉をかぶせたら申し訳ない*7。BABYMETALは驕らないんじゃなくて、論理的にオゴりようがないのである。中高年は何かあるとすぐに茫漠たる歴史と価値観を持ち出して囃し立てて、自分の「物語」に引き寄せて感動のタネを探そうとするが、それよりもBABYMETALの目に世界がどう見えているのかを想像するほうが楽しいと思う*8

 

 

ときどき「Sis. Anger」が「ブラックメタル」だって言う人がいますがそれは違います。あれはブルータルデスメタルでしょう。やる気も希望も激しい衝動もなく、「好きな言葉は "怨念"」とか言ってる私のような人間が聴くのがブラックメタルです。
いろいろ疲れました。懐かしいBurzumさんとDarkthroneさんのところに帰ります。


 


 

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ひとつヘビー級のやつを聴いてよ。

ジャズに足を踏み入れたころにリチャード・ツワージクの "Round About Midnight" を聴いちゃったのが運の尽きというか、これはさすがにヤバイ、引きずり込まれるって思った。

 


Dick Twardzik Trio - Round About Midnight (1954 ...


Dick Twardzik Trio - I'll Remember April - YouTube

 

「ラウンド・ミッドナイト」をこんなふうに演奏したやつはいない。イッちゃってるって言えばバド・パウエルもそうだけど、これに比べたらパウエルはまだ無邪気なくらいだ。ツワージクはヘロインのやり過ぎでわずか24で死んじゃうわけだけど、どっちにしてもこんな演奏をするやつが長く生きられるはずがない。立ってる場所がもうこっちの世界じゃないんだ。完全に違うものを見ちゃってる。突き詰めた正気っていうか。

またほら、死んだときにパリで共演してたのがチェット・ベイカーだから。できすぎだろ。

 

 

 

中元すず香が聴きたくなると戻るところ。
「成長」なんていうのは凡人がするもんだとは思わんかね。
今よりもよっぽど表現が成熟してるではないか。フレージングの機微に対する配慮が行き届いている。BABYMETALのボーカリストはこうでなきゃいけない。ワールドツアーをやるようになってから、こういう舌を巻くような上手さがあんまりなくなった。しかもここではサウンド全体がガッツリとタイトでヘビーである。スポーティーでまっすぐで毒にも薬にもならない今とは段違いだ。おれは「世界」なんかどうでもいい。この Heaviness と後ろめたさといかがわしさがあればそれでいい。

なかもっさんはね、普通の物差しじゃ計れないっすよ。
「線」で変化してないから。
瞬間の人」なんだから。こっちが物の見方を変えなきゃだめ。

 

なかもとー
あんたすげえよ

 

 

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メタルメタルってうるせえよ

プログレだよ美狂乱だよKENSOだよ

聖地=吉祥寺シルエレだよ

30年以上聴いたって飽きねえよ

 

意味なんかいらねー

可愛いは正義だぞBABYMETAL

 

Bye for now.

 

*1:いいワケねーだろー。メタルなんていうのはアホが聴く音楽である。おのれがアホであることを深く自覚するための音楽である。そこに人格の陶冶に資するメタルの効用があるんであって、メタラーであることに誇りを持ったり、力を込めてメタルについて語り合ったり、未来ある青少年にメタルを勧めるなどというのは、真の意味でメタルに学ぶことがない、真正の阿呆である。ましてや、50年も60年も生きておいて、それでもメタルを聴いてるような輩は(おれのことか?)、相当なクズと言っていいだろう。

*2:なぜダサいのか。それはメタルを構成するパーツと、そのパーツの組み合わせ方が、いちいちキチンとしていてお行儀がいいからである。タルんだところがないからである。そういう意味で、さくら学院とメタルは元々異質なものではない。むしろ親和性が高い。これがパンクだとベクトルが真逆になるが。

*3:そもそもHEAVY METALに真のヘヴィネスなどない。
ヘヴィネスとはモーターヘッドであり、グランド・ファンク・レイルロードである。

*4:BABYMETALを称賛する人たちが言ってることって結局これに尽きる。ホントにそうなの?

*5:ただしそれが可能になったのは、本当の神曲だったイジメダメゼッタイのおかげであって、BABYMETALはその残像で生きてるようなもんだろう。イジメダメゼッタイができた瞬間に、BABYMETALの可能性も限界も決まったんだと思う。でもそれは30年は食える強力な残像だから安心したまえ、安心が欲しいなら。もっとも、集団ヒステリーみたいなもんから目覚めない限り、今後30年の間にイジメダメゼッタイを超える曲は生まれないだろうが。「悲しさ」や「無力感」から生まれる平衡感覚を捨てちゃったからな。BABYMETALが美しさを保っていたのは、そういう無力感がベースにあったからだ。それがいつのまにか、「道なき道を行く」とか「私たちの音楽」とか、どこで吹き込まれたのかは知らんが、大日本精神の血脈たる "全能感" にシフトしてしまった。あとは「いつも予想の斜め上を行く」"不敗神話" の御輿に乗っかって、行き着くところまで行くしかない。

*6:なんかメイトみたいな優しいことを言ってますが、ライブビューイング直後は「BABYMETAL何様のつもりだ」って相当憤慨してました。その横でニイちゃんが壁に抱きついて「やったよ、やったよ」って号泣してたんですけど。

*7:って思えよ

*8:「我々世代の長年の夢をいまBABYMETALに託している」とか、どう思おうが勝手だけど、野暮だねぇ。だいたい、適当なオモチャ程度に扱ってるならまだしも、BABYMETALがそんなに新しくてすばらしいもんだって本当に考えてたら、古い自分の貧困な発想を投影しようとはそもそも思わんよな。ところがBABYMETALに海外で何かの代理戦争をやらせて、勝った勝ったの提灯行列をやって喜んでいる。なんかその、"自分の夢とBABYMETALは地続きだ" みたいな自信って、どっから来てんの(自信だよそれは。強力な自己肯定力と言ってもいい。うらやましいわ)。

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